風邪ing

2002年5月26日
 
今日は家で家族・使用人総出で蔵の掃除。我が家の
蔵には天竺・唐からの由緒ある巻物や陶器が山のよ
うに保管されている。もちろん、どれも国宝級だ。
実は正倉院よりウチの方がすごいと学術会ではもっ
ぱらの噂なのだ。

先日、そんな中でも一番イマイチなヤツを洒落でお
宝探偵団に出てみたら「いい仕事してますね〜。」
の雨アラレでかなりうざくなったくらいである。
 
 
 
そんな蔵を今日は家のもの総出で掃除をした。久々
の蔵の中は古の香りでいっぱいである。ボクはここ
の匂いは昔は嫌だったが、今は大好きである。ニコ
ニコしていると、下男の高田が
 
 
「ぼっちゃん、もうこの場所に入っても泣かないですね。」
 
  
と軽口を叩く。そうなのである。子供の頃はイタズ
ラがばれると、この蔵に放りこまれ、いつも暗い中
で泣いていたからである。
 
 
「もういい大人だから、そんなことないよ。」
 
 
照れくさそうにボクがこう言うと、高田の目がキラ
リと光る。小さい頃、グズグズ泣いていたボクと今
のボクを照らし合わせ、感極まったみたいだ。高田
には世話になりっぱなしだ。小さい頃、蔵に放り込
まれたボクに握り飯を持ってきてくれたり、大きく
なってハーバードに進む時も、親は反対したが、高
田だけはボクの肩を持ってくれた。本当にありがた
い話だ。
 
 
「ぼっちゃん、お・・・」
 
 
高田が口を開こうとした時に、
 
 
「ドリーさん!見つかったぞ!!」
 
 
と蔵の奥から親父の声がした。高田の顔を見ると、
涙を潤ませながら、ウンウンと頷く。
 
 
「さぁ・・・」
 
 
高田に促されて歩を進めると、そこには先祖代々受
け継がれてきた我が家宝「兜鎧」が眠っていた。親
父の顔を見ると、懐かしそうな顔をしている。
 
 
「オレも着たな〜。もう何十年前だ?」
 
 
掃除をした理由。それはこの「兜鎧」を探すためで
もあった。そして、この「兜鎧」を探す理由。
 
 
「親方さまはあの晴れ姿は今でも鮮明に覚えてますよ。」
 
 
と高田が顔をクシャクシャにしながら言う。
 
そう、この「兜鎧」は我が家の婚姻の儀式を行う時
のみに着れる衣装なのである。
 
  
「さぁ、表に運ぼう!」
 
 
麗らかな天日に照らされた「兜鎧」は古の美しい輝
きを煌々と周りに示していた。
 
 
「とうとうですね。」
 
 
一服の為にお茶を持ってきた母親がこう呟いた。
 
 
 
 
(any not ノンフィクション)
 

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